2013年01月04日
サンドライド シダモの謎 3
『サンドライド エチオピア シダモ®』の次の謎に触れる前に、前提となる知識としてコーヒー・チェリーの精製について簡単に説明しておきましょう。
収穫されたコーヒー・チェリーは、果肉が取り除かれて生豆(種の部分)となりますが、この過程を精製といいます。(スタバのページでは加工と呼んでいますが同じことです)。サクランボから種を取り出すような感じです。
未熟果から完熟果までのコーヒー・チェリー(Freepik)
主な精製の方法を無理に短くまとめるとこうなります。
① 乾燥式・・・収穫したコーヒー・チェリーを干して乾燥させた後、カラカラになった果肉を取り除く
② 水洗式・・・収穫したコーヒー・チェリーを水槽に漬けて醗酵させ果肉を取り除く
乾燥式は昔ながらの方法で、設備のコストがかからないという利点がありますが、異物や欠点豆が多いことと乾燥中に運悪く雨に降られるとダメージを受けるというデメリットがあります。
それに対し、水洗式は大量の水と水槽などの設備が必要となりますが、異物や欠点豆が少ない高品質でクリーンな豆を作ることができます。
品質の序列は一般に、水洗式 > 乾燥式 となります。
さて、いよいよ本論です。前回の引用部分と重なりますが、スタバの公式ページでは次のように紹介されています。
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実際は、エチオピアでは元来原始的とも言える乾燥式がほとんどで、少し前からシダモ地方のイェルガチョフ地区で栽培され水洗式で精製された豆がグルメ・コーヒーとして知られるようになりました。エチオピアの水洗式は30年ほど前に始まり、高値で取り引きされるため徐々に拡大しているものの全体の2割程度だったと思います。
引用部の最初の文は、ハラールやイェルガチョフといった地域は水洗式のコーヒーでは知られていないのに対し、シダモ地方は水洗式のコーヒーで知られているという内容です。これは明らかな誤りです。水洗式で知られるようになったのはシダモ地方のイェルガチョフ地区で、イェルガチョフ以外のシダモ地方とハラール地方では乾燥式が普通です。
さらに引用した二番目の文には、「シダモ地方の乾燥式加工法は比較的歴史が浅い」とありますが、これも明らかな誤りです。乾燥式加工法は昔ながらの方法で、比較的歴史が浅いのは前述の通りシダモ地方のイェルガチョフ地区を中心に行われている水洗式加工法です。
上記二点の誤りは、エチオピア・モカやコーヒーの精製についての基本的な知識に関わるものであり、うっかり間違えるという類のものではありません。なのに、なぜ?というのが第三の謎なのです。
引用した説明文から ①「ハラール」と「イェルガチョフ」を下げて、「シダモ」を上げる、 ②「エレガントな水洗式」よりさらにシダモの「乾燥式」を上げる、という印象操作が読み取れます。“誇大”広告などは別に珍しいことではありませんが、単に一商品を良く見せたいために行き過ぎただけなのでしょうか? (続く)
収穫されたコーヒー・チェリーは、果肉が取り除かれて生豆(種の部分)となりますが、この過程を精製といいます。(スタバのページでは加工と呼んでいますが同じことです)。サクランボから種を取り出すような感じです。
未熟果から完熟果までのコーヒー・チェリー(Freepik)
主な精製の方法を無理に短くまとめるとこうなります。
① 乾燥式・・・収穫したコーヒー・チェリーを干して乾燥させた後、カラカラになった果肉を取り除く
② 水洗式・・・収穫したコーヒー・チェリーを水槽に漬けて醗酵させ果肉を取り除く
乾燥式は昔ながらの方法で、設備のコストがかからないという利点がありますが、異物や欠点豆が多いことと乾燥中に運悪く雨に降られるとダメージを受けるというデメリットがあります。
それに対し、水洗式は大量の水と水槽などの設備が必要となりますが、異物や欠点豆が少ない高品質でクリーンな豆を作ることができます。
品質の序列は一般に、水洗式 > 乾燥式 となります。
さて、いよいよ本論です。前回の引用部分と重なりますが、スタバの公式ページでは次のように紹介されています。
エチオピアの中でもハラールやイェルガチョフといったほかの地域とは異なり、シダモ地方はエレガントな水洗式のコーヒーで知られています。シダモ地方の乾燥式加工法は比較的歴史が浅いのですが、地元の農園と協力関係にあったスターバックスのコーヒーバイヤーの提案がきっかけとなり、このコーヒーは生まれました。引用元 http://store.starbucks.co.jp/coffee/beans/reserve
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実際は、エチオピアでは元来原始的とも言える乾燥式がほとんどで、少し前からシダモ地方のイェルガチョフ地区で栽培され水洗式で精製された豆がグルメ・コーヒーとして知られるようになりました。エチオピアの水洗式は30年ほど前に始まり、高値で取り引きされるため徐々に拡大しているものの全体の2割程度だったと思います。
引用部の最初の文は、ハラールやイェルガチョフといった地域は水洗式のコーヒーでは知られていないのに対し、シダモ地方は水洗式のコーヒーで知られているという内容です。これは明らかな誤りです。水洗式で知られるようになったのはシダモ地方のイェルガチョフ地区で、イェルガチョフ以外のシダモ地方とハラール地方では乾燥式が普通です。
さらに引用した二番目の文には、「シダモ地方の乾燥式加工法は比較的歴史が浅い」とありますが、これも明らかな誤りです。乾燥式加工法は昔ながらの方法で、比較的歴史が浅いのは前述の通りシダモ地方のイェルガチョフ地区を中心に行われている水洗式加工法です。
上記二点の誤りは、エチオピア・モカやコーヒーの精製についての基本的な知識に関わるものであり、うっかり間違えるという類のものではありません。なのに、なぜ?というのが第三の謎なのです。
引用した説明文から ①「ハラール」と「イェルガチョフ」を下げて、「シダモ」を上げる、 ②「エレガントな水洗式」よりさらにシダモの「乾燥式」を上げる、という印象操作が読み取れます。“誇大”広告などは別に珍しいことではありませんが、単に一商品を良く見せたいために行き過ぎただけなのでしょうか? (続く)
※エチオピアの地名表記はスターバックス ジャパンの表記を用いました
Posted by ぎんばいか at 22:00
│コーヒーのこと