2012年11月07日
ロンドン・ブリッジを渡って
2002 ヨーロッパへ行ってみた その17
『London Bridge is falling down ・・・・』という子供の頃に口ずさんだ童謡を頭の中で再生しながら、ロンドン・ブリッジを渡ってシティへと戻ります。
かつてこの橋のたもとには、映画『ブレイブハート』でメル・ギブソンが演じていたウィリアム・ウォレスに始まり、ワット・タイラーやトーマス・モアのような名の知れた人物から数多くの無名の人々まで、処刑された人々の首がさらされていたそうです。日本でいうと、京の三条大橋のような場所だったわけです。交通の集結点に切断された頭部を掲げることで「逆らうとこうなるぞ」という見せしめとする発想は、洋の東西を問わず権力者に共通するものだったのですね。
そんなおどろおどろしい過去とは裏腹に、2002年のロンドン・ブリッジは拍子抜けするほど何の変哲もないコンクリートの橋でした。
橋の半ばで立ち止まり、欄干から真下のテムズ川の川面に目を落とした後、視線を右に向け川沿いの今歩いてきた道をたどり、しばしタワーブリッジを眺める。続いて左のロンドン塔をぼんやりと見つめ、最後にシティのビル群に目をやった。まだ夢の中から抜けきれていないようで、自分がイギリスにいることが、ロンドン・ブリッジの橋上にいることが信じられないように思えました。
ふと、「そうだ写真を撮ろう、今自分がここにいる証拠を遺しておこう」と思いつきました。車が途切れるのを待って車道を横切り反対側の歩道に渡ります。カメラのファインダーをのぞきこみ、背景にタワーブリッジが大きく入るようズームをテレ側に調整し、通行人を利用してピントを合わせます。セルフタイマーモードに切り替えたカメラを欄干に置くと、シャッターを押し急いで歩道の端でレンズに向かいました。
タワーブリッジの手前に見えるのがベルファストの艦橋
シティをそのまま徒歩で回るつもりだったのですが、少々疲れてしまったので1,2区間だけでもと、バスに乗りました。ギルドホール、ロイヤル・エクスチェンジ、ロイズ保険組合、イングランド銀行・・・行きたいところはたくさんありました。金融や経済に興味を覚えたら、1回くらい見てみたいと思うものです。
北海油田の開発、サッチャー元首相によるビッグバン・・・イギリス経済は英国病から見事に立ち直り、シティは世界の金融センターとして復活しました。ロンドンらしからぬ近代的な高層ビル街、タイトなブラックスーツに身を包んだエグゼクティブたち・・・けれど二階建てバスの窓からシティを眺めているうちに、それらがまるで蜃気楼であるかのような錯覚に襲われました。もうバスから降りようとは思いませんでした。
ロンドン塔には幽霊が出るといわれます。でも、“貨幣”であれ最先端の金融商品であれ、いや金融というシステムそのものがロンドン塔に出るという幽霊よりもよっぽど不気味で怖ろしい幽霊ではないだろうか。そんなことをぼんやりと考えていました。
バスがセント・ポール寺院の前を通り過ぎたとき、先ほどのメアリー・ポピンズの背筋をまっすぐに伸ばした姿が見えたような気がしました。それもすぐに、風の中に消えていったけれど。
2002 ヨーロッパへ行ってみた-その1
『London Bridge is falling down ・・・・』という子供の頃に口ずさんだ童謡を頭の中で再生しながら、ロンドン・ブリッジを渡ってシティへと戻ります。
かつてこの橋のたもとには、映画『ブレイブハート』でメル・ギブソンが演じていたウィリアム・ウォレスに始まり、ワット・タイラーやトーマス・モアのような名の知れた人物から数多くの無名の人々まで、処刑された人々の首がさらされていたそうです。日本でいうと、京の三条大橋のような場所だったわけです。交通の集結点に切断された頭部を掲げることで「逆らうとこうなるぞ」という見せしめとする発想は、洋の東西を問わず権力者に共通するものだったのですね。
そんなおどろおどろしい過去とは裏腹に、2002年のロンドン・ブリッジは拍子抜けするほど何の変哲もないコンクリートの橋でした。
橋の半ばで立ち止まり、欄干から真下のテムズ川の川面に目を落とした後、視線を右に向け川沿いの今歩いてきた道をたどり、しばしタワーブリッジを眺める。続いて左のロンドン塔をぼんやりと見つめ、最後にシティのビル群に目をやった。まだ夢の中から抜けきれていないようで、自分がイギリスにいることが、ロンドン・ブリッジの橋上にいることが信じられないように思えました。
ふと、「そうだ写真を撮ろう、今自分がここにいる証拠を遺しておこう」と思いつきました。車が途切れるのを待って車道を横切り反対側の歩道に渡ります。カメラのファインダーをのぞきこみ、背景にタワーブリッジが大きく入るようズームをテレ側に調整し、通行人を利用してピントを合わせます。セルフタイマーモードに切り替えたカメラを欄干に置くと、シャッターを押し急いで歩道の端でレンズに向かいました。
タワーブリッジの手前に見えるのがベルファストの艦橋
シティをそのまま徒歩で回るつもりだったのですが、少々疲れてしまったので1,2区間だけでもと、バスに乗りました。ギルドホール、ロイヤル・エクスチェンジ、ロイズ保険組合、イングランド銀行・・・行きたいところはたくさんありました。金融や経済に興味を覚えたら、1回くらい見てみたいと思うものです。
北海油田の開発、サッチャー元首相によるビッグバン・・・イギリス経済は英国病から見事に立ち直り、シティは世界の金融センターとして復活しました。ロンドンらしからぬ近代的な高層ビル街、タイトなブラックスーツに身を包んだエグゼクティブたち・・・けれど二階建てバスの窓からシティを眺めているうちに、それらがまるで蜃気楼であるかのような錯覚に襲われました。もうバスから降りようとは思いませんでした。
ロンドン塔には幽霊が出るといわれます。でも、“貨幣”であれ最先端の金融商品であれ、いや金融というシステムそのものがロンドン塔に出るという幽霊よりもよっぽど不気味で怖ろしい幽霊ではないだろうか。そんなことをぼんやりと考えていました。
バスがセント・ポール寺院の前を通り過ぎたとき、先ほどのメアリー・ポピンズの背筋をまっすぐに伸ばした姿が見えたような気がしました。それもすぐに、風の中に消えていったけれど。
2002 ヨーロッパへ行ってみた-その1
Posted by ぎんばいか at 22:00
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